ハンドメイド品で生じ得る知的財産トラブルの解説

ハンドメイド品で生じ得る知的財産トラブルの解説

【スタッフ視点の知財ブログ(22)】

2月になりました。
1月からの緊急事態宣言は、コロナ感染者があまり減らなかったために、
3月まで続くことになりました。
このため、今後も不要不急の外出を控える必要があり、
これからも、自宅で過ごす時間がたっぷり確保できそうです。
ちなみに、自宅で過ごす時間がコロナ禍以前よりも多いせいか、
ある製品の販売が増えているそうです。

そこで、今回は、
スタッフTさんにその製品と、それによって布地から作られるハンドメイド品で生じ得る知的財産のトラブルとを紹介してもらい、そのトラブルについての解説をしていきます。

これを読むことで、

  • 布地は、著作権、商標権以外に、特許権や意匠権、そして、不正競争防止法でも保護可能であること。
  • 市販の布地を縫製して販売する場合でも、著作権法においても、布地メーカーに許可をとらなけばいけないこと。
  • 上記の知的財産権で自分の侵害のおそれの一番は、やはり著作権であること。

が理解できるようになり、布地などの原材料に権利があるもの
加工して製品を作る際の知的財産権に関するリスクを理解でき、
そのリスク回避を行うことが可能となります。

少しでも知財の力を活用していただければ幸いです。

ハンドメイド品でも権利侵害の可能性がある???

スタッフTさん

スタッフTです。
先日、目にしたニュース番組で、
いま家庭用ミシンの販売が好調だということを知りました。
どうしてミシンが?
と首を傾げたところ、ミシン
このコロナ禍で手作りマスクの需要が高まったことや、
外出自粛で家にいる時間が増え、趣味としての手芸の楽しさが見直されていること、
などが主な理由だとのこと。
確かに私の家の近所でも、
ハンドメイドのマスクや小物を販売する青空フリーマーケットが開かれているのを
最近よく目にします。

リバティプリント

リバティプリントと呼ばれる有名な小花柄や、
北欧デザインで有名なマリメッコなど、
既製品ではあまり見られない個性的な色柄のマスクやポーチ、
可愛い品物がたくさん並んでいて目にも楽しい光景ですが…

しかしそこで、ふと気になりました・・・

マコメットプリント生地屋さんから正規に購入した、素敵なプリントやデザインの布で作ったマスクや小物は、
個人で販売してしまっても大丈夫なものなのでしょうか???

少し調べてみたところ、一部「ハンドメイド品であることを明示すれば販売可能」
なメーカーさんやブランドさんもあるものの、
おおむね「商用利用は禁止」のケースが多いことが分かりました。
有名な柄のブランド生地をそのままコピーすると、著作権違反になったり、
その柄が生地に対して商標登録され、それと同一又は類似する柄を生地に使用すると商標権侵害となったり
することは勿論知っていましたが、
公式に販売されている布地を購入して作成した製品の販売も、ものによってはNGとなるようです。

確かに、生地だけではなく小物も販売しているブランドですと、
「公式で販売している品物なのか、個人が制作して販売しているハンドメイド品なのか」
区別がつかなくなってしまいますし、
もしも個人製作の品が粗悪な品で、それを自社製品と誤解されれば、
ブランドにも傷がついてしまって一大事です!
そのため、
「商用利用禁止」の生地は、その旨が生地の一部に明示されていたりすることが多いようです。

素敵なハンドメイド品を楽しむためにも、
作り手側は使用したい生地が商用利用OKかきちんとメーカーさんに確認を取ること、
そしてメーカーさん側も、
自分たちの販売する生地が商用利用OKなのかNGなのかをきちんと明示することが、
どちらも大事だなと思いました。

ハンドメイド品で生じ得る知的財産トラブルの解説

布地は、著作権、商標権以外の他の権利でも保護されるの?

スタッフTさんスタッフT:布地は、上述したように、
著作権と、商標権とによって保護されることはわかります。
では、それ以外の知的財産権でも保護される可能性はあるのでしょうか???

弁理士須藤

弁理士須藤:まず、意匠権での保護が可能です。
意匠は、物品の美的外観と言われているので、
衣類やバッグだけでなく、柄が付けられた布地に対しても、
権利をとることができます(右図は、意匠登録第1460379号の布地)。
ちなみに、意匠権第1460379号意匠権を取得する際に提出する図面は原則6枚の図面(正面図、背面図、4つの側面図)が必要です。
しかし、
布地は平面なので、右図の意匠では、表面図と裏面図のみで済ますことができています。

その他でいうと、特許あるいは実用新案でも布地の保護が可能です。
例えば、布地の柄の素材や形状に特別な機能があるような場合に保護可能ですね。
しかし、機能性下着や機能性のあるスポーツタイツや保温ソックスや競泳用水着など、
用途に併せて作成すると権利取得がより容易になります。

スタッフTさんスタッフT:なるほど、そうなんですね。
ちなみに、それ以外の法律で、
このような
生地が保護される可能性はあるのですか???

弁理士須藤

弁理士須藤:そうですね。
他の商品の有名な状態を不正に利用するような行為は、
不正競争防止法という法律で禁止されています。
例えば、先ほどの生地の図柄などについて、
意匠権も商標権もない状態で、かなり有名であるといったときに、
それに似た生地を生地メーカーが無断で製造して、
大量に販売してしまうような場合に、適用される可能性があり、保護可能といえます。

なお、

生地メーカーなら、模様を、とちらかというと、商標出願ではなく、
意匠出願する方が良いかもしれませんね。

 

スタッフTさんスタッフT:えっ、なぜですか?
商標権でも、柄を登録すれば、真似されなくてよいので、
意匠権でも商標権でも良いように思いますが・・・・

弁理士須藤

弁理士須藤:生地メーカーなら
生地の模様をそのまま使って小物に加工してもらうことを
意図しているはずです。
この観点からすると、
布地を正規ルートで購入してもらった時点で、その意匠権は使い尽くされた状態(これを消尽と言います)となります。
このため、生地状態の柄は意匠権で保護されますが、
正規に購入されれば、その意匠権に左右されることなく、
加工するメーカーが自由に小物に加工することができます。
しかし、
柄に商標権があるとなると、正規に購入しても、
その柄を使用するのに制約が出てくる可能性があるので、
加工するメーカーにとっては扱いづらいものになるかもしれないからです。
まあ、
逆に、有名な柄でブランドにキズを付けられないように商標権を取って、
加工メーカーの小物に効果的な制約をかけるということが有効な場合もありますね。

市販の布地を縫製して販売するのに、なぜまずい?

スタッフTさんスタッフT:あのう・・・
公式に販売されている布地を購入して作成した製品の販売も、物によってはNGとなるようですが、
その理由としては、私が上述した内容で合っているでしょうか?

弁理士須藤

弁理士須藤:Tさん言った理由は以下の2つですね。

  • 布地だけでなく、その布地から小物に作成して販売しているブランドであれば、布地を購入した人が作った物であるかその布地のブランドが作った物か、がわかりにくくなること。
  • もし、布地購入した人の作った物が粗悪品であれば、そのブランドのイメージ低下につながること。

その通りと思います。
しかし、まだ理由が考えられます。
それは、その布地で小物を作ることを特定の小物メーカーに契約していたりする場合があります。
その場合もNGとなりますね。

スタッフTさんスタッフT:なるほど、
その場合に、勝手に小物が作られ、販売されることを布地メーカーが見逃しまうと、
その特定の小物メーカーとの契約違反となる可能性があるからですね。
ちなみに、そういったことを、(この場合では、著作権法だと思いますが、)
法律では、ちゃんと規制できるようになっているのですか?

弁理士須藤

弁理士須藤著作権法では、著作物である布地からマスクや小物を作ることが、二次的著作物に該当します。
つまり、マスクや小物を作ったら、それらとその作った人の権利は、
布地を作ったメーカーと同様に著作権で保護されますが、
そもそも、
布地からマスクや小物を作る権利翻案権といいます)は布地を作ったメーカーにあり
保護されるのです。
このため、布地が市販品であり、正しく購入しても、布地から何かを作って販売しようとする場合には、
布地を作ったメーカー(著作権者)の許可を取る必要があるのです。
以上が著作権の法律上のことです。

布地に特許権があった場合には、上述した意匠権と同様に、
基本的に、正規に購入した時点で、その特許権(や意匠権)の効力はなくなり、
布地から加工した小物には影響はありません。
ただし、
その小物については、特許、意匠、商標が別途既に権利化されている可能性もあります。
このため、その小物について権利があるかを予め調査する必要があります。

スタッフTさんスタッフT:ちなみに、販売して儲けるということで、
侵害となってしまうのでしょうか?
無料であれば問題ないということにはなりませんか???

弁理士須藤

弁理士須藤無料でも、配布するようであれば侵害となる可能性があります。
儲けないんだからいい、とは決めつけない方がよいのです。

上記知的財産権で一番気を付けるべきことは?

スタッフTさんスタッフT:自分が言うのもなんですが、
知的財産権というのは、利用する側からすれば、
上手く利用することで他人から自分の権利を十分保護できそうですね。
逆にいえば、
自分では他人の知的財産を侵害していないと思っていても、
よくよく考えてみると侵害している!ということもありそうですね。
そういう意味からすると、
特許、意匠、商標、著作権、不正競争防止法に対して、
自分が侵害しているかもしれないと疑う際には
どれに一番気をつける必要があるのでしょうか?

弁理士須藤

弁理士須藤そうですね。
一概には言えませんが、特許権、意匠権、商標権を取得する目的が、
他人からの侵害を防ぐことと、自分の商品の優位性を謳うこと、
の両方があるので、
出願段階でも敢えて、表記されている場合が多いのです。
実際に、
私も、特許、意匠、商標の出願状態で積極的に表記することを勧めています
特許権、意匠権、商標権は、
言わば、まねではなく、オリジナルであることの証明であり、
セールストークに活用できる側面もあるからです。
そして、特許、意匠、商標については、
特許庁で審査され、権利化されると登録され、原則的には必ず公開されます。
このため、
特許、意匠、商標については、権利有無を比較的に容易に調べることが可能です。

これに対して、著作権は、生地を作った時点で権利が発生することもあり、
敢えて表記されることも、登録されることも少ない状態です。
このため、著作権については、侵害するかどうかを慎重に検討する必要があるといえます。

また、特許は出願から20年、意匠は出願から25年、商標は出願から10年毎に必ず更新ができ(即ち、永久権)、著作権は公表から70年と、権利期間がさまざまであり、この期間にも気をつける必要があります。

スタッフTさんスタッフT権利期間もかなり違うので、注意が必要なのですね。
・・・
これからは、
ハンドメイド品を見ると、これって権利侵害していないのかな・・・
と、そればかりが気になってしまいそうです。

弁理士須藤

弁理士須藤:そうかもしれませんね。
でも、正規に販売されている生地を正規ルートで購入していれば、
上記クリアすべき知的財産の確認事項は、そう苦労することなく、ほとんど確認することができます
ですから、
そういった手間を惜しまずに、ハンドメイド品の制作を楽しんでもらいたいと思います。
最近では、ハンドメイド品をメルカリなどに出している人も多いので、
このあたりのことについては、ぜひ
注意してもらいたいですね。

スタッフTさんスタッフT:もう1つ聞きたいのですが・・・
個人で、ハンドメイドをして配布せずに、自分だけで楽しむうえでは、
著作権を含めて、知的財産権の侵害のおそれはないと考えて良いのですよね。

弁理士須藤

弁理士須藤勿論です。
生地メーカーから正規のルートで購入した際には、
他の人に配布しようとせず、基本的に個人で楽しむだけなら大丈夫です。

スタッフTさんスタッフT:じゃ、
まだ外出の制限も続きそうなので、
私もお気に入りの生地を見つけて、何か作ってみようと思います!

まとめ

ハンドメイド品で生じ得る知的財産トラブルの解説を以下にまとめます。

  • 布地は、著作権、商標権以外に、特許権や意匠権、そして、不正競争防止法でも保護可能であること。
  • 市販の布地を縫製して販売する場合でも、著作権法においても、布地メーカーに許可をとらなけばいけないこと。
  • 上記の知的財産権で自分の侵害のおそれの一番は、やはり著作権であること。

もし、わからない部分や疑問点などありましたら、
お気軽にぜひコメントまたはお問い合わせくださいね。

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